
現在使用されている薬剤の標的である逆転写酵素とプロテアーゼ、インテグラーゼ以外のウイルスタンパク、あるいは宿主のレセプターを標的にした新薬開発も活発に行われている。
図1に示したように、HIV-1複製過程の全てのステップが新薬開発の標的となりうる。
その中でも実用化に近い下記薬剤について簡単に記す。
経口のエントリー阻害剤であるSP-01Aは、脂質ラフトの形成に影響を与えるコレステロール、コルチコステロイド、アクチン細胞骨格再構築を抑制し、HIVと細胞の融合を阻止する。
Samaritan Pharmaceuticals社によって、第II相臨床試験が行われている。[No authors listed], 2008
AMD070は、以前AnorMed社によって開発されたAMD3100の次世代CXCR4阻害剤であり、現在はGenzyme社によって第I相臨床試験が行われている。Stone ND, 2007
侵入阻害剤では、現在、CCR5阻害剤の研究開発が最も頻繁に行われている。
TAK-220及びTAK-652は、経口投与可能なCCR5阻害剤で、昨年まで武田薬品工業が開発していたが、現在は米国のバイオベンチャーであるTobira Therapeutics社によって第I相臨床試験が行われている。Imamura S, 2006;Baba M, 2005
CCR5阻害剤として最初に臨床試験に入ったSCH-Cの後継薬であるVicriviroc(SCH-D/SCH 417690)は、Schering-Plough社によって開発されており、現在第III相臨床試験まで進んでいる。Emmelkamp JM, 2007
また、Incyte社も経口CCR5阻害剤INCB9471及びINCB15050を開発しており、それぞれ第II相臨床試験、第I相臨床試験まで進んでいる。[No authors listed], 2007
PF-232,798はMaraviroc耐性株に対しても強い活性を持つCCR5阻害剤であり、現在Pfizer社によって第II相試験が行われている。
Gryphon Therapeutics社が開発するNonakineは、RANTESアナログであり、現在第I相臨床試験が行われている。また、HGS004,PRO140といったCCR5に対するモノクローナル抗体も第I相臨床試験が行われている。Lalezari J, 2008
| 開発コード | 企業 | 開発段階 (Phase) | Reference | |||
|---|---|---|---|---|---|---|
| I | II | III | ||||
| 侵入阻害剤 | SP-01A | Samaritan Pharmaceuticals | ■ | ■ | [No authors listed], 2008 | |
| CXCR4阻害剤 | AMD070 | Genzyme | ■ | Stone ND, 2007 | ||
| CCR5阻害剤 | Vicriviroc(SCH-D/SCH 417690) | Schering-Plough | ■ | ■ | ■ | Emmelkamp JM, 2007 |
| SCH-532706 | ■ | Pett SL, 2009 | ||||
| INCB9471 | Incyte | ■ | ■ | [No authors listed], 2007 | ||
| INCB15050 | ■ | |||||
| 706769 | GSK | ■ | ||||
| TBR-220 | Tobira Therapeutics | ■ | Imamura S, 2006 | |||
| TBR-652 | ■ | Baba M, 2005 | ||||
| PF-232,798 | Pfizer | ■ | ■ | |||
| RANTESアナログ | Nonakine | Gryphon Therapeutics | ■ | |||
| 抗CCR5抗体 | HGS004 | Human Genome Sciences | ■ | Lalezari J, 2008 | ||
| PRO140 | Progenics Pharmaceuticals | ■ | Dau B, 2009 | |||
| 膜融合阻害剤 | TRI-1144 | Trimeris | ■ | |||
成熟阻害剤のBevirimat(PA-457)は、プロテアーゼによってCAとp2に切断されるプロセッシングの過程を阻害する。既存薬のPIとは異なり、Gagに結合してプロテアーゼによる切断を阻害する。
現在、Panacos Pharmaceuticals社によって第II相臨床試験が行われている。また、同社から第二世代の成熟阻害剤PA-1050040も第I相臨床試験が進行中である。
| 開発コード | 企業 | 開発段階 (Phase) | Reference | ||
|---|---|---|---|---|---|
| I | II | III | |||
| Bevirimat(PA-457) | Panacos Pharmaceuticals | ■ | ■ | Martin DE, 2008 | |
| PA-1050040 | ■ | ||||
| MPC-9055 | Myriad Pharmaceuticals | ■ | |||
現在、Gilead Sciences社が開発しているElvitegravir(GS-9137/JTK-303)は、キノロン骨格を有し、マグネシウムイオンと結合することによってstrand transferを阻害する。
ElvitegravirはCYP3A4の代謝を受けるので、RTVブーストで血中濃度を維持させる必要がある。Ramanathan S, 2007
同社のジケト化合物GS-9160も第I相臨床試験が行われている。Daelemans D, 2007
また、Merckが開発しているC-2507は、第I相試験が行われている。
| 開発コード | 企業 | 開発段階 (Phase) | Reference | ||
|---|---|---|---|---|---|
| I | II | III | |||
| Elvitegravir(GS-9137/JTK-303) | Gilead Sciences | ■ | ■ | ■ | Klibanov OM. 2009 [No authors listed] 2008 Ramanathan S, 2007 |
| C-2507 | Merck | ■ | |||
| 1349572 | GSK, Shionogi USA | ■ | |||
RFS Pharma社が開発中のAmdoxovir(DAPD; -b-D-2,6-ジアミノプリンジオキソラン)は、体内でアデノシンデアミナーゼによって脱アミノ化され、逆転写酵素の基質である活性部分のジオキソラングアニンに変換される。Narayanasamy J, 2007
現在、第II相臨床試験まで進んでいる。また、このAmdoxovirは抗HBV活性も有している。
シチジンアナログであるApricitabineはAvexa社によって第I相臨床試験が行われており、高度NNRTI耐性ウイルスに対しても活性を示す。Cahn P, 2008
Achillion Pharmaceuticals社が開発しているElvucitabineは第II相臨床試験が行われている。半減期が20時間以上のため、1日1回の投与となっている。また本剤は、HBVにも効果を発揮する。
Pharmasset 社のRacivirはEmtricitabineとその右旋性化合物との混合物であり、現在、第II相臨床試験が進行中である。Hurwitz SJ, 2005
この薬剤も抗HBV活性を持つ。
Koronis Pharmaceuticals 社のKP-1461は、チェーンターミネーターではなく、変異を蓄積させることによってウイルス増殖を抑制する。現在、第II相臨床試験が行われている。Harris KS, 2005
GS-9131は、Gilead Sciences社によって第I相臨床試験が行われている。Ray AS, 2007
| 開発コード | 企業 | 開発段階 (Phase) | Reference | ||
|---|---|---|---|---|---|
| I | II | III | |||
| Amdoxovir | RFS Pharma | ■ | ■ | Narayanasamy J, 2007 | |
| Apricitabine | Avexa | ■ | ■ | Cahn P, 2008 | |
| Elvucitabine | Achillion Pharmaceuticals | ■ | ■ | ||
| Racivir | Pharmasset | ■ | ■ | Hurwitz SJ, 2005 Harris KS, 2005 |
|
| KP-1461 | Koronis Pharmaceuticals | ■ | ■ | Nitanda T 2005 | |
| OBP601 | Oncolys BioPharma | ■ | |||
Tibotec Pharmaceuticals社が開発しているRilpivirine(TMC-278)は、有効投与量が低いので中枢神経系の副作用が少ないという利点があるが、血中半減期が非常に長いので薬剤の蓄積による副作用が懸念される。現在、第II相臨床試験が行われている。Goebel F, 2006
その他の第II相臨床試験が行われている薬剤としては、Boehringer Ingelheim社のBILR-355-BS、Pfizer社のUK-453061が上げられる。Boone LR, 2006
Calanolide Aは、Calophyllum種の植物から単離されたクマリン化合物で、Sarawak MediChem社によって第I相臨床試験が行われている。Creagh T, 2001
また、Idenix Pharmaceuticals社のIDX-899、ArdeaBiosciences社のRDEA-806も、現在第I相臨床試験が行われている。Sweeney ZK, 2008
| 開発コード | 企業 | 開発段階 (Phase) | Reference | ||
|---|---|---|---|---|---|
| I | II | III | |||
| Rilpivirine | Tibotec Pharmaceuticals | ■ | ■ | ■ | Garvey L, 2009 Goebel F, 2006 |
| BILR-355-BS | Boehringer Ongelheim | ■ | ■ | Boone LR, 2006 | |
| UK-453061 | Pfizer | ■ | ■ | ||
| Calanolide A | Sarawak MediChem | ■ | Creagh T, 2001 | ||
| IDX-899 | GSK, Idenix Pharmaceuticals | ■ | ■ | Sweeney ZK, 2008 | |
| RDEA-806 | Ardea Biosciences | ■ | ■ | Sweeney ZK, 2008 | |
| 開発コード | 企業 | 開発段階 (Phase) | Reference | ||
|---|---|---|---|---|---|
| I | II | III | |||
| SPI-256 | Sequoia Pharmaceuticals | ■ | |||