構造学的な視点から見た薬剤耐性

コンピュータは我々の日常生活を豊かにしただけでなく、科学分野にも大きな変化をもたらした。

現在、複雑な情報を理解・処理するために、コンピュータによる解析は必要不可欠となっており、コンピュータ技術の利用はヒトゲノム計画に代表されるようなDNA配列のアライメントからX線画像解析まで多岐に渡っている。

今日のコンピュータ技術の発展に伴い、研究手法も大幅に進歩し、現在では抗HIV薬剤の開発にも利用されている。

Figure 1. 臨床検体より分離された薬剤耐性を獲得したHIVプロテアーゼの立体モデル構造

従来用いられてきた創薬の手法としては、候補化合物ライブラリーからのハイスループットスクーリング(HTS)や合理的な薬剤設計あるいは構造科学に基づく設計がある。Chen IJ, 2002 ;Kirkpatrick DL, 1999 ;Posner BA, 2005 ;Marrone TJ, 1997

HTSはライブラリーから候補化合物を見つけ出し、さらに薬剤の効果や条件の最適化を評価する方法であるが、多大な時間と資金を要するという欠点がある。Jalaie M, 2006

これを補う手段として、コンピュータを用いたアプローチが出現し、HTSと置き換わりつつある。Posner BA, 2005 ;Keseru GM, 2006

このコンピュータを用いた手法とは、一般的に分子の“ヴァーチャル スクリーニング”と呼ばれ、標的となるタンパクと薬剤候補化合物との結合、つまり“ドッキング”を解析する手法である。Jalaie M, 2006 ;Olson AJ, 1998

ドッキングはまだ新しい分野ではあるが、効率、コストの面において優れており、創薬の研究には欠かせない技術となりつつあり、莫大な数のプログラムが開発されている。 Carlsson J, 2008 ;Goodsell DS, 1996

ドッキングに加え、分子動力学; molecular dynamics(MD)や分子モデリングもまた、HIVの研究において重要な役割を果たしている。

MDプログラムにより、コンピュータ上でどの分子同士が相互作用しているか可視化することが可能となる。Botta M, 2002 ;Verkhivker G, 2008

しかしながら、MDシミュレーションの欠点として、大量の情報処理を行えるコンピュータ環境が必要となる。

それでもドッキングやMDのようなコンピュータ解析ツールは今後もますます活用されていくと予想される。

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